今月(2023年11月)の16日に江東区の高齢者地域包括ケア計画推進会議がありました。そのなかで2025年に亀戸に新しい特養ができることが発表されました。それに対し、委員の一人グループホーム・小規模多機能連絡会 会長の佐藤氏から「介護職員の確保もままならない江東区の現状、施設を増やしてどうするのか」という厳しい意見が飛びました。担当の課長さんは、「特養は区民のニーズがある。福祉人材の確保は喫緊の課題。力を入れて取り組む」とのこと。しかし、佐藤氏は「それは本人のニーズじゃないでしょ。家族のニーズでしょ。自分から施設に入りたいなんて人はそんなにいない。在宅サービスにもっと真剣に取り組んだらどうですか」と反論。
私は福祉人材の確保を含む、役所の介護・福祉の姿勢に疑問をもっています。そして、介護事業所の声を区政の場に届け、改められるところは、きちんと改善し、新たにお金をつけるべきところはちゃんと予算化するよう訴えていきたいのです。そんなわけで最近はもっぱら介護事業者と(区からの仕事を請け負う)福祉職員にヒアリングをしています。
そこで非常に深刻に感じたのが、福祉職員の「あきらめ感」です。役所が決めたことだから仕方がない、言われたとおりにするしかない、そういった空気ができあがっています。役所のほうもそれを知ってか、どんどん役所の都合を押し付けてきます。
私は議員として福祉職員から苦情を受けます。煩瑣な事務、不合理な禁止事項、人権が軽視されたサービス支給など各種の苦情があります。その苦情に対して、ベテラン福祉職員にコメントを求めると、大概は「そんなことは仕方がない。それよりも現場のほうが大切だ」という返答でした。
なにより驚いたのがあたかも不適切な現状のほうが正しいと思い込んでしまっていることでした。たとえば「自己決定の尊重といっても結局は家族の意向だから仕方がない」、「地域包括支援センターの支援力に関して地域でばらつきが出てしまうのは仕方がない」などなど。これは本来、福祉専門職として肯定してはならない由々しき事態なのです。
現状を改めるために役所に物申すことは、なかなかエネルギーがいることです。業務に追われる中、役所に意見することまで手が回りませんし、さらに業務負担を増やすのは勘弁してほしいというのは当然です。
ただ、私たちは福祉専門職です。ひどい現状に寄り添っていては本末転倒。適切なあり方を求めていく姿勢がその職責です。そういった意味で、冒頭で挙げたグループホーム・小規模多機能連絡会 会長の佐藤氏の発言は、利用者ニーズの尊重という面でソーシャルワーク専門職として然るべき意見です(佐藤氏も社会福祉士!)。
福祉の仕事でホンネを優先することほど危険なことはありません。私自身、支援の現場のホンネとして差別的な考えを抱いてしまうこともあります。しかし、それを口に出したりすることは絶対にありません。「ひどい現状は仕方がない」とホンネを優先してしまっては、利用者支援が損なわれ続けていくと理解しているからです。タテマエを最優先にするのが利用者に寄り添うことです。適切な支援現場へと改善していくには労力を要します。それを怠ってはならない。私自身も社会資源の一つとして力になっていきたいです。どんどん私を使ってください。