意思決定支援の留意点

私の信条

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さて、シリーズで「意思決定支援」というテーマを論じています。福祉サービスの利用者の意思をどうくみ取るかというお話です。

日本のように自己主張をしないことが美徳とされる文化、権利意識が低い国だけでのテーマではありません。なにせ国連の障害者権利条約(2013年日本批准)のスローガンが「私たち抜きに私たちのことを決めないで」です。この条約は欧米主導でつくられていますから、西洋社会でも障がい者が自分の意思を主張できない状況が多々あるのでしょう。

今回は、利用者の意思決定に係る留意点を論じます。日本社会福祉士会で「ここがポイント!」と提示しているものがありますので以下に示していきます。

① 本人以外の関係者の問題を本人の問題としてすり替えていないか

② 結論が先にありきになっていないか、後付けの根拠資料として使われていないか

③ 支援のしやすさを優先していないか、支援者のための根拠付けになっていないか

④ サービス先にありきの、既存のサービスを当てはめるだけの検討に終わっていないか

以上4点は、利用者の意思を度外視して、支援者の都合のみで支援を進めようという姿勢です。利用者の意思を尊重する気持ちで支援していても①~④がぬぐいきれない汚れのようについてきます。というのも、私たちは制度の枠組みの中で仕事をしているからです。

私自身もやりがちなのですが、利用者の希望に耳を傾けるよりも、どのように制度にあてはめるかということを考えてしまいます。たとえば、ある程度経験を積んだケアマネジャーや相談支援専門員は、利用者と初回面談をしたときに今後のケアプランのイメージが出来上がると思います。私も利用者と自宅の状況を確認すると今後作成するであろうケアプラン第3表(週間サービス計画表)が目の前に広がっていきます。

しかしです、チョロっと面談したくらいでその人の主訴や本当の希望を把握できるのでしょうか。いわんや認知症の人、知的障がいのある人をや、であります。

どんなに経験のある支援者の見立てでさえ、利用者の家族や長い付き合いのある人の見解にはかないません。制度ありきで自身のフレームに利用者の生活を押し込めようとする傾向、これこそが経験を積んだ支援者が陥りやすい考えなのです。そこに利用者の意思が入り込む余地はありません。自分のやり方や支援チームの関わりやすさが優先され、クライアントの希望がなおざりにされてしまうのです。

意思決定支援を検討することは支援者自身が問い直されることでもあります。利用者の個別性を尊重しているか、自己覚知できているか、など社会福祉援助技術の教科書に出てくる基本的なことがいかに身についているかが問われるのです。