福祉職ハラスメント その1

医療・福祉

「ビールを買ってこいと言っただろ、このバカ!」。訪問介護で買い物の支援をしたところ、このような暴言を受けた。

ケアマネジャーが相談中に「いい年して結婚してないのは、あなた自身に問題がある」と人格を否定された。

みなさんは、利用者からの暴言を受けたことはありませんか。また暴力を振るわれたり、性的いやがらせを受けたという経験はありませんか。これらは福祉職に対するハラスメントです。措置時代からあったことですが、介護保険以降、慢性的に介護労働者が不足している現在、福祉職員の確保と離職防止の文脈から福祉職ハラスメントを顕在化させ、解決に努めようと厚生労働省も躍起になっています。

〔福祉職ハラスメントは、すそ野が広い〕

今回、福祉職ハラスメントを考察していきます。とはいえ、考えれば考えるほどすそ野の広い問題であることがわかりました。サービス業であれば悪質クレーマー、教育であれば、校内暴力、モンスターペアレントというように送り手と受け手の非対称性がある分野でほぼ同様の問題が起きています。コミュニケーション上での構造的な問題なのかもしれません。

ただ、福祉の分野に限って言えば、①利用者本人と社会 ②福祉行政 ③専門職(福祉職)の3局面にそれぞれ課題があると私は考えます。

これからシリーズで福祉職ハラスメントについての3局面を一つずつ検討していきます。今回はイントロダクションです。

〔ハラスメントの訴えは放置されてきた〕

家族及び職員が利用者に暴力をふるうということが以前から問題になっていました。そのため児童・高齢・障がいで虐待防止法ができています。これに対して、利用者からのハラスメントはどうでしょうか。福祉の仕事に関わる人は、総じて見て見ぬふりをしていたと私は思います。前述のとおり、ハラスメントは措置時代からありました。それを放置していたのです。なぜでしょう。

〔ハラスメントを受けてこそ一人前?!〕

福祉職員はハラスメントを受け、それに耐えることが勲章である、仕事のうちである、利用者からのいやがらせに対応できないようであれば一人前ではない。そのような意識があるのです。「セクハラを受け流せるようじゃないと」とか「○○さんからの洗礼(いやがらせ)がないようでは信頼関係が築けない」などハラスメントを受けて当然のような風潮がいまでも存在しています。社会的にも福祉職員がハラスメントを受けることは仕方がないというとらえ方があると私は考えます。

だからといって、ハラスメントを行う利用者を攻撃する対応(反動的対応)は間違いです。他方でハラスメントを受けた被害者の職員には、深く、丁寧なケアが必要だと思います。