「中高年のひきこもり その1」に引き続き、今回もひきこもりの問題を取り上げます。
〔「その1」のお話〕
前回、確認したことは、いま、ひきこもりの当事者は、大人だということ。子どもの不登校の問題だけではありません。30代後半から50代前半のおもに就職氷河期世代が当事者なのです。彼らは社会生活で心身ともにボロボロになって、ひきこもっています。彼らを精神的に追い詰めたブラック企業、彼らを生み出した政治・行政の体制に大きな責任があると指摘しました。
現在、ひきこもりの人たちは約61.3万人にのぼるそうです。この状況に声をあげず、指をくわえてみていた、世間一般の人々も責めを負うべきかもしれません。
今回は、ひきこもりの方々に対してどのような支援が考えられるか、私見を述べます。
〔「引き出し屋」に910万円を支払う〕
タイムリーなことに2月1日から4日間、朝日新聞朝刊で「ひきこもりのリアル」という連載がありました。
第1回は、悪徳な「引き出し屋」が掲載されました。「引き出し屋」とは、自立支援のプロを自称する悪徳業者です。ひきこもっている当事者を強引に自宅から連れ出し、研修と称して自由を制限。親に対して高額な費用を請求する行為で問題になっています。
記事では、悪名高い「あけぼのばし自立研修センター」が掲載されていました。40代後半のひきこもりの息子をかかえるの80代の親に910万円もの費用を支払わせていました。その男性はセンター職員に自宅から連れ出され、強制的に寮生活を送らされていたようです。しかし、2年後には研修所近くのアパートで死亡。死後1、2週間が経過していて、餓死の疑いもあるということでした。
息子の自立を期待して、「引き出し屋」にすがった親の無念は計り知れません。息子のために自宅を売却して、910万円を捻出したそうです。ひきこもりの子どもをなんとかしたいという親の気持ちに付け込んだ「引き出し屋」ビジネスを国として取り締まり、対策を強化してほしいです。
〔親はどうすればいいのか〕
「8050問題」というように親も高齢です。いずれにしても、親は藁をもすがる思いで「引き出し屋」に依頼したはずです。しかし、ひきこもりは、親の責任ではなく、社会の責任です。悪徳業者に頼らざるを得ない状況があってはなりません。国をあげて、支援策を講じてなければならないと私は考えます。
私も小学校4年生の息子がいます。ひとりの親として子どもを見放すことはできません。けれども、子どもが成人年齢に達したら、経済的・物理的な面では、見放してもいいのではないかと思っています。というのも、成人した子どもにそういった支援を行うのは、ある意味、子どもに対する支配性をはらんでいると思われるからです。つまり、子どもかわいさに子どもの自立を阻害するのは、親のエゴ、パターナリズム(父権的保護主義。保護的になんでもやってあげること)だと考えられるからです。ただ、親である以上、精神的なつながりの面では子ども見放すことはできないでしょう。(その3に続く)