中高年のひきこもり その1

私の信条

〔「ひきこもり」とは〕

厚労省のガイドラインによれば、「ひきこもり」とは、以下となります。

「社会的参加を回避し、原則的には6ヵ月以上にわたっておおむね家庭にとどまり続けている状態」

今回は、中高年のひきこもりについて私の意見を述べます。

〔子ども・若者の問題ではない〕

2000年ごろの調査では、ひきこもりを始める年齢の平均は15才だったそうです。しかし、近年の報告によれば、ひきこもり開始の平均年齢は21歳に上がっているそうです。かつて、ひきこもりは子どもの不登校の問題とセットで語られることがほとんどでした。しかし、いまや大人の問題なのです。

このことは何を意味しているかというと、いったん社会に出て就職した人がひきこもってしまい、ひきこもり開始の平均年齢を引き上げているということです。

〔ひきこもりと就職氷河期世代〕

2019年の内閣府の調査では、40~64歳の日本全国のひきこもりの推定人数は、61万3千人。江東区の人口が52万人ですから、その人数には驚かされます。そのうち、57.4%が40歳以降でひきこもりを始めたそうです。

1970年~1982年に生まれた人(現在、39~51歳の人)は、就職氷河期世代とか団塊ジュニアとか呼ばれています。好景気の恩恵にはあずかれず、バブル崩壊後の就職活動で苦労した世代です。私もこの世代に属します。同世代の友人をみると、みな就職活動でたいへんな思いをしています。フリーターや派遣労働などの非正規雇用の人、実家暮らしで給与的にはワーキングプアの状況の人も知り合いで普通にいます。

いまでこそ、ブラック企業という呼称がありますが、日本経済の衰退や労働形態の変化に乗じて、従業員の人権を踏みにじる会社が、かつてはごく当たり前に存在していました。そういった企業も氷河期世代が何とか入社できた会社です。不当な労働を強いられても就職させてもらった手前、文句を言わず働くしかありませんでした。

〔中高年のひきこもりは社会の責任〕

ブラック企業で身も心もボロボロになって、ひきこもってしまった人、非正規雇用を続けていて正社員になれず、実家に戻ってひきこもってしまった人・・・彼らを責められないと私は思います。働き盛りでいちばん充実した日々を過ごせる時期に社会と隔絶した状態を選ばざる得ない精神状態に追い込まれるなんて、考えただけでも悲惨すぎます。

責められるべきはむしろ企業の側、社会の側です。彼らから搾取して大きくなった会社やブラックな体制を肯定して労働環境の改善を図らなかった組織には、大きな責任があると考えます。また、ブラック企業が跳梁跋扈するような社会を許したのは、政治体制にほかなりません。そのような国政を選び取った国民全体にも責任があるでしょう。61万人以上の中高年のひきこもりの人たちに対して、企業、社会、政治が支援の責任を負い、具体的な支援を開始しなくてはならないと私は思います。