無縁社会、再び

まちづくりと環境

〔無縁社会の議論が再浮上〕

年末から現在にかけて「無縁社会」の話題がいろいろなところで掲載されています。

昨年11月26日号の東洋経済の巻頭特集は「一億総孤独社会」でした。また朝日新聞では、12月23日から4日間にわたって、「無縁遺骨を追う」という連載をしていました(クリスマスなど関係ない!シビアな内容)。さらに朝日の1月23日の一面見出しは、「相続人なき遺産647億円」。

〔無縁社会の現在〕

ちなみに江東区の孤独死の件数の最新は、2021年度で290人(自殺含む。東京都監察医務院調べ)。NHKスペシャル「無縁社会~無縁死3万2千人の衝撃~」は2010年の放送です。12年も経過していますが無縁死に関して劇的に改善された気はしません。

仕事上、独居高齢者の支援に関係していたこともあって無縁死や社会的孤立のことに興味を持って調べています。最近感じるのは、「孤立していないけれども結果的に無縁死になってしまう」状態です。つまり、社会的つながりもあるのだけれど、死後事務を担ってくれる人がいないために無縁死になってしまう問題です。

〔親族以外が葬儀をするのは難しい〕

親きょうだいがみな亡くなっているAさんという独居の高齢者がいたとします。Aさんは、近隣との関係も良好で友達もたくさんいます。

では、Aさんが亡くなったときに死後の事務を担うのは誰なのでしょうか。それは親族です。相続人である親族が葬儀するのが通常の流れです。しかし、相続人が不存在の場合もあります。また親族であっても関わりたくないので相続放棄するかもしれません。親族以外が勝手に葬儀をすることは不可能ではありませんが、その後のトラブルが予想されますし、葬儀費用はその人持ちになります。赤の他人の葬儀を担おうとする人はそうそういないですよね。

Aさんに遺言書があればいいかもしれません。ただ、Aさんの資力が乏しかったとしたら、遺言を執行して、死後事務を引き受けてくれる人物を見つけるのは難しいと思います。

結果として、社会的孤立はしていなかったAさんでも自治体が「行旅死亡人(引き取り手のない遺体・無縁死扱い)」として葬儀を行うこととなります。

〔自治体の消極的な対応〕

引き取り手のない遺体に関して、自治体が親身に対応してくれるかというとそのようなことはありません。私も仕事上、遺骨の引き取り手がなく、困ったことが何度かあります。行政に助けを求めてもかなりの塩対応。仕方がなく、私自身が近所の寺に頼み込んで遺骨を預けたこともあります。

〔法整備をしてほしい〕

ただ、こういった自治体の消極的な姿勢も死後事務に係る法整備の不備に原因があると思います。引き取り手のない遺体と残置物の処理に関して、円滑な対応ができる法令を整備する必要があります。

不動産業者や大家が入居者の孤独死を恐れて、高齢者に部屋を貸さないことも死後事務のたいへんさが理由のひとつです。

高齢人口の増加で多死社会が到来します。無縁社会問題提起から一二年。いい加減、死後事務に関する法整備をかっちりとしてほしいものです。