「福祉就労」の現状 後編

福祉就労 労働と経済

(前編からのつづき)

生産性を高め、工賃がアップすれば、事業所の運営費(報酬)がいっぱいもらえる。しかし、仕事ができない、生産力のない人たちばかりの施設は、運営が成り立たなくなっても仕方ないという制度設計です。

実際に今年度、職員の人件費をまかなえず、施設閉鎖の危機に追い込まれている事業所がたくさん出てきています。事業所閉鎖とならないように工賃をアップのために本来、利用者がやる仕事を施設職員がやっているという本末転倒な事態も起こっているのです。

いま東京都の障がい者が稼いでいる工賃月額の平均はだいたい1万5千円です(1か月分ですよ!時給にして130円くらい)。

福祉就労をしている人は、身体・知的・精神での障がいを抱える方々です。作業を行うこと自体が困難だったり、生活に課題を抱えていたりと就労にあたってさまざまなハードルがあります。

福祉専門職の共通認識において福祉就労の本来の目的は、生産性を上げることではなく、障がい者のニーズに応じた支援を提供し、一般就労に結びつけるなどして、自立と自律を促すことです。

生産性が上がれば障がい者施設として価値があり、運営に値するなどという考えは、大きな間違いです。人間の価値を生産性でしかとらえていません。工賃は安いけれどその人のニーズに合ったよい支援を行っている事業所はたくさんあります。

津久井やまゆり園の痛ましい事件から1年半足らずで、仕事ができない障がい者を切り捨てる制度を開始する無神経さ。わが国の将来はだいじょうぶなのでしょうか。

しかしながら、無関心や勉強不足の私たちも同罪かもしれません。工賃の高い・安いで障がい者施設の運営資金が左右されるなんて細かい話、一般的な市民は関心ありません。なんの話かわからないのが普通です。結局、国民がわからないところで障がい者が不利益を被る制度がつくられてしまうのです。

生産性で人間が評価されるのは間違っていることを改めて強調しますが、同時に私たちは、行政が知らないうちに、わからないように立場の弱い人から搾取するやり方を見極める目を持たなければなりません。現場責任者たる私たち福祉職員は絶えず、行政のやり方を監視し、このような不当な制度には改善を要求するべきです。現場から声をあげていきましょう!私もファイトでがんばります!