公開講座「障がいとお金」報告

医療・福祉

下町ユニオンという労働組合で「ケアワーカーズユニオン」という福祉労働者の集まりの代表者を務めています。そこでは毎月の交流会と年に数回の学習会を開催しています。今回、2024年4月12日、第2回スペシャル公開講座「障がいとお金」が開催。

講師は、一般社団法人オリオンの相談支援センター「ぽこ・あ・ぽこ」に勤務する谷中彩子さん。社会福祉士・精神保健福祉士の資格を有しています。また、谷中さんは、当事者の親でもあります(障がいを患うこどもの母親)。講師自身が障害福祉サービスの仕組みを理解することがいかにたいへんか身をもって経験し、公的な経済的支援を適切に受けることについて心を砕いてきました。

現在の障害福祉に係るサービス、手当や年金は非常にわかりづらい。その証拠に今回の講座には平日の夜にもかかわらず、障害福祉を学ぼうと31人もの福祉専門職の参加があったのです。専門職でも難しいものを福祉と無縁の人が理解できるでしょうか。難解な社会保障制度は、大問題です。

講義内容は、各種障害手当の効果的な受給方法や障害年金の円滑な申請の秘訣などなど。講義上での個々の制度解説をこの短い報告ではできませんが、例えば下図のように受給可能な諸手当を表にまとめてわかりやすく説明してくれました。

さまざまな質問がでました。医療ソーシャルワーカーの方から「障害福祉サービスの報酬改定の状況を教えてほしい」という声があがりました。今年度は、医療・介護・障害の3分野で同時に報酬改定が実施されました。法律の改正もあり、現場は大混乱です。講師からは、「生活介護やグループホームがマイナス改定で就労系サービスがプラス改定」とのことでした。就労したくてもできない障がい者を冷遇しているようで、問題のある改定内容です。

参加者は、介護保険の仕事(高齢者福祉)に携わっている人が多かったので後で聞いてみると「障害福祉サービスのことはほとんどわからない」とのこと。近接分野なのに法制度が違うとお互いのことを知らないのです。現状、こども・高齢・障害・医療など各分野で連携がほとんどなく、バラバラに動いています。

こういったタテ割りすぎる状況に改善の兆しはありません。ただ、ちょっとだけ行政のフォローをすると、きめ細かい制度を設計しようとすると制度が複雑化してしまうというジレンマがあります(例えば、新設された「就労系の通所施設を選ぶための事業」など、一見するとどんなものかわからないサービス)。

タテ割りと制度の複雑化に対して、行政に声をあげずに放置すれば、それが強化されてしまいます。積極的にヨコ串を刺し、簡素化に努める活動をしなければなりません。今回の公開講座はささやかながらそのような活動の一環であったと考えています