居住支援について

まちづくりと環境

今回は、「新たな住宅セーフティネット制度」と「居住支援法人」についてお話します。

日本では福祉と居住(住宅の確保)とは別物と考えられていました。行政の役割分担では、「福祉は厚生労働省」、「居住は国土交通省」と区分けされています。しかし、2000年代になって福祉と居住を一体的にとらえる考え方が強くなっていきました。というのも、居住に係るさまざまな福祉課題が噴出していたからです。都市部での高額な家賃、ネットカフェ難民、無縁死・孤独死・・・そして、とくに問題なのは社会的弱者が住まいを追われてしまうことです。さまざまな理由で家を失った高齢者や障がい者に不動産店、大家は賃貸物件を貸してくれないのです。立場の弱い人の居住の危機は、現在進行形で生じています。

行政の中で居住といえば、かつては都市計画など住宅政策を指していました。しかし、いまや居住は、生存権の一部として住まいを確保するための権利を意味します。もともと西欧諸国では、安心した住まいこそ福祉行政の使命とされています。わが国の行政機関は居住を民間部門に丸投げして、福祉的な調整を図らなかったのです。居住における行政の怠慢が現状生じている住まいの危機の主な原因です。

居住の危機が叫ばれるようになり、2007年に「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット法)」が創設されました。法律の名称にもなっている「住宅確保要配慮者」とは、高齢者、障がい者、低額所得者、子育て世帯、被災者です。さらに2017年には法改正により、「新たな住宅セーフティネット制度」ができました。改正法では「居住支援」という項目が前面に出されています。そして、居住支援を行う者として「居住支援法人」が定められました。

住まいの確保を支援する専門の法人を創設するというのは、なかなかいい発想だと思います。住居さがし、引越し、それに伴う細かい事務処理は、高齢者や障害者にとってかなりの負担です。住宅確保要配慮者が安心できる住まいを確保するまでの過程に寄り添って支援してくれる人が必要なのです。

彼らに部屋を貸すことを拒む大家や不動産会社もいます。収入が少ない、身寄りがないなどの事情は、部屋を貸す方にとってリスクだからです。しかし、そういった問題を抱える人をしっかりサポートする人がついていて、大家が困ったときでも手伝ってくれるとなれば受け入れ側のハードルは下がります。大家と住宅確保要配慮者の両者の利益となる関係づくりが大切なのです。

「新たな住宅セーフティネット制度」と「居住支援法人」の創設は、とても大きい変化です。居住に係る福祉課題を解決する機関がこれまではなかったからです。これらの居住制度の問題点の指摘は今回行いませんでした。しかし、居住支援法人の活動が活発化し、ノウハウが蓄積すれば、多くの人たちを迅速かつ効果的に救済することができます。現在、全国で373もの居住支援法人があります。これからの展開に目が離せません。