ケアマネジャーの業務範囲を考える

医療・福祉

「すみません、テレビが映らなくなっちゃったんですが、みてもらえませんか」

利用者やその家族からケアマネジャーに、こういった訴えがあった場合、どのように回答するべきでしょうか。かつてこの訴えに「ケアマネは電気屋じゃないんだよ!」と担当ケアマネが感情的に対応して、トラブルになった事例があります(本当)。

改めて、ケアマネジャーの業務範囲は何なのでしょう。なぜ業務範囲ではないことまで頼まれてしまうのでしょう。今回はケアマネの業務範囲を考えていきます。

現状をみると、厚労省の「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」でケアマネの業務範囲の適正化が議論されています。そして、ケアマネ人材の確保の問題も取り上げられています。ケアマネ不足は深刻です。2025年までに約2万7千人の増員が必要という試算が出ています。なり手が圧倒的に少なくなっていますし、「なりたい」という社会的なモチベーションもガタガタ。なにせ給料が安くて、仕事がキツイわけですから。

さて、肝心のケアマネの本来的な業務範囲は何か。厚労省の説明では、①ケアプラン作成 ②市区町村・サービス事業者・施設等との連絡調整、だそうです。当然ながらテレビの修理は含まれていません。

なぜ本来業務以外のことも頼まれるのか。これはある意味、ケアマネが利用者や家族に信頼されている証拠です。なんでも相談できる人物だから、介護と関係ないことも相談されちゃうんです。これを「利用者に甘く見られている」とか「専門性に問題がある」とか解する人もいます。しかし、業務外とはいえ、利用者の細かい訴えを突き放したところで、いい関係が築けるわけがありません。

加えて、社会資源の少なさゆえに業務外の仕事が押し付けられることもあります(たとえば、お金の管理など)。こういったことで、仕方なく、業務外のことも当然のようにやってしまうのです。

以上を鑑みて、ケアマネ業務に関する私の持論は、「ケアマネに、ほぼ何でも任せられるようにする」。そして、そのかわりに、「いまのケアプランの報酬を倍にする」。もちろんこれは、財源のことを考えない暴論です。

15件くらい担当すれば、月収30万円程度が得られるような報酬設定にするのです(ちなみに2019年度平均担当件数36件)。件数に余裕があれば、細かい相談にも対応できますし、収入増でケアマネになりたい人も増えます。そして、同時並行で行政には、ケアマネ業務を後押しする社会資源の開発をやってほしい。

ちなみにケアプランの利用者負担の議論には反対の立場です。ケアプラン増額の財源を公費でまかなうことが重要なのです。ケアマネジャーの給料に公費が十分に投入されていることが専門職としての責任とプライドに直結します。厚労省で「ケアマネジメントの質の向上」の議論がありますが、税金で適切な収入を保証すれば、ケアマネジメントの質はどんどん高くなると思います。

以上、社会保障財源の配分論をガン無視した提案でした。プラン報酬の増額とケアマネジャー増員を国が実現してほしい。いずれにせよ、ケアマネ業務範囲の問題の根本には、「低賃金」、「人手不足」という2つの原因があるのだと私は考えます。