かつて福祉の職員をしていたのですが、いまは自治体の議員をしています。議員になってからは役所の態度が一変! 以前はバイ菌のような扱いをうけていましたが(文句を言いに行くことが多かったからか)、いまはサービスがいいんですよ。課長さんがすぐに出てきてくれて、突っ込んだ議論に参加してくれるんですね。いやー立場が変わると対応も変わるもんです。
さて、役所は福祉事業所に対して、上から目線というか冷淡なところがあります。一方、福祉事業所のほうは役所に対して表面的には従順ですが、裏ではそのやり方を非難する人が多いです。
福祉関係者にとって役所とのビミョーな関係は、永遠のテーマといった感じです。しかし、ここ最近、「ビミョーな関係」という表現はすまないような事態になって、役所と対立・反目の関係になってしまうことさえあります。どうしてこのようなことが起こってしまうのでしょう。
社会福祉事業は、もともと行政の仕事でした。社会保障は裕福な人から貧乏な人まで、みんなに行きわたらなければなりません。利益を度外視してそれができるのは国・行政なのです。しかし、2000年に社会福祉事業は株式会社のような民間団体もできるようになりました。もちろん、福祉の事業で民間企業が利益をあげるのはかなり難しいことです。ですので、福祉事業のために国・自治体に計上された税金や保険料が役所を通して、民間団体に支払われるようになっています(これを「介護報酬」といいます)。そして、介護報酬が支払われるまでのサービス全般の制度設計を国・行政が一手に担っているわけです。国としては、「オレが考えたシステムに乗っかって金儲けしているだけだろ」と思っているのかもしれません。
ただ、福祉事業所に勤める人のほとんどは、人のためになる社会貢献の仕事をやりたいという人です。利潤追求のビジネスなど考えていません。福祉の仕事を志す人のやりがいにつけこんで低額な報酬と劣悪な労働条件を要求する国のやり方には私も当然ながら大反対です。
本来、行政と福祉事業所は対等な関係です。行政は財政面と制度面を担っている以上、事業所と仲良くすることはできません。ある種の緊張関係があると思います。しかし、それは役所が事業所よりも上だということではありません。市民によりよい社会保障を確保するという共通ゴールのもと、サービス提供する役割が事業所であり、環境整備する役割が役所です。上下関係ではなく役割の違いです。
かつては役所が直営で社会福祉事業をやっていました。役所の職員も利用者と泣き笑いしながら仕事をしていました。しかし、いまでは福祉の現場を知る役人はほとんどいません。一方で福祉事業所のほうも役所の仕事をぜんぜん知りません。ましてや制度設計の細かい部分のことなどわかりません。
来年から大きな制度改正があるのに役所も事業所もなんらのアクションもありませんね。少なくとも役所と事業所のコミュニケーションを活発化しなくてはいけないと考えています。形骸化した会議ではなく、お互いの立場を適切に話し合い、具現化できる場が必要なのです。