コロナ禍で思うこと

私の信条

いまこれを書いているのが2020年4月26日の深夜0時。「江東区内の特別養護老人ホームでクラスター発生」の情報がネットで流れているのをちょうど見つけたところです。しかもわが家から徒歩10分の特養ホームです。

3月5日に私が講師として、ケアワーカズユニオン学習会を開催しましたが、私自身の浅はかさを反省しています。これほどコロナウィルスの市中感染が拡大しているのは、私のようなウィルスの脅威を甘く見ている者が原因です。10人程度の参加者だったとはいえ、密集した空間での会合。来てくださった方々は、会場まで公共交通機関を使用しています。みなさまを危険にさらしてしまったことを深くお詫び申し上げます。

さて、福祉の現場ではコロナウィルスの対策はどうなっているのでしょうか。福祉サービスを実施する市区町村と厚労省の見解をざっくり言うと「サービスを止めると利用者が死んでしまうから、継続して実施してください。でも感染にはくれぐれも気を付けてね」という内容です。

3月くらいからたくさんの通知や感染対策フロー、Q&Aなどが行政から矢継ぎ早に出てきて、一見、迅速な対応のようでした。しかし、内容的にはごく一般的な感染予防と相談機関、業務の自粛要請が書いてあるだけでほんとうに知りたいことが載っていません。

たとえば、「代替サービスの利用」の提案です。「通所系サービス利用は、なるべく休止して、代替となるサービスを利用する」という内容が行政の通知に記されています。デイサービスの代替とは何でしょうか。訪問介護で代替するとしても現在、ヘルパー人材の不足で人手が足りていない状況。利用しようとしてもヘルパーさん自体がいないのです。第一、訪問介護は在宅生活を支援するサービスですから日中活動を支援するデイサービスとは目的が違います。

このようなことは、行政も知っているはずです。通知を出す時点でなぜ行政内部でよく検討しなかったのか不思議です。

要するに行政は大胆な緊急対応を行うつもりがないのでしょう。こんな状況ですから、個人的には介護報酬を格段にアップしてほしいです。感染拡大下で直接処遇の福祉サービスは継続しろと要求しているのですから危険手当支給の意味合いもあります。

社会福祉にかかるお金を削りに削った結果が、慢性的な介護人材の不足です。人が足りていれば、コロナ禍による介護現場の混乱はより小さいものだったと思います。要介護者の支援に余裕を持ってあたれる体制を構築できなかったのは行政の責任です。介護者の生活を支援するのは福祉職の仕事ですが、コロナウィルス対策は行政の仕事です。行政職員も人手が足りないというのは、人員削減した自治体の問題なのであって、民間の介護事業所に責任を転嫁するようなことはあってはならないです。そんなことを考えながら毎日、職場の消毒をしています。

国が社会保障を軽く考えているのです。なかでも「公衆衛生」はとりわけ軽視されています。保健師が公衆衛生を担うといって、保健師さんの主たる業務は、乳幼児や妊産婦の支援、精神保健などです。また広報も十分でないと思います。私たちは公衆衛生の専門家は誰なのか知りませんし、一般的な感染症予防は耳にしますが、パンデミックを科学的な言葉できちんと説明してくれる人物の存在すら知らないです。

コロナウィルス禍、終わりがなく、何が正しいのかさえもわかりづらい状況です。一つ言えるのは、ウィルスが単独では増殖できず、人を介しての感染ということ。甘く見ないで、人が集まらない工夫を基本としていくしかないのでしょう。