2020.9.4 開催 北砂ホーム講演会報告

私の信条

2020年9月4日に「北砂ホームの経験に学ぶ 介護崩壊を防ぐ」が江東区総合区民センターにて開催され、53名の参加がありました。今回はその内容のご報告です。

土屋 健志 氏(あそか園施設長)「北砂ホームで発生した新型コロナの経過と対応」

①  感染者発生(4月中旬~)

4月中旬に2階の利用者で発熱者が増え、10人以上となる。保健所の指示でPCR検査を実施し、14名の陽性が確認。2階担当の全職員15名が出勤停止となった。

②  必死の業務と独自の対応(4月下旬~)

法人が独自に応援職員の確保などに動く。4月27日、全利用者・職員にPCR一斉検査を実施(180名)。利用者22名、職員6名が陽性と判明。保健所から3階担当の全職員に出勤停止が命じられる。日勤の職員が続けて夜勤を担当するなど現場は過酷な状況と化した。その間、応援職員の派遣が開始。他県からも協力職員がやってきた。

③  終息の光(~5月上旬)

4月28~29日で軽度、無症状者は施設内でのケアすることを決定し、ホームを疑似病院化。ゾーニング実施により陽性者21名を2階でケアした。電子カルテの活用、継続的なPCR検査など独自の工夫が続けられた。職員の出勤停止が解除され、5月下旬には、ほぼ終息となった(完全終息は6月22日)。

◎さまざまな課題

・清掃事務所が感染ごみということで、ホームのごみを収集してくれなかった。

・救急隊員から「感染者を搬送するとすぐに次の搬送に使えない」とクレームがあった。

・集団感染の原因は現在も不明のまま

和田敬子氏(北砂ホーム施設長)「集団感染の現場を経験して」

熱発者が次々に出て、職員が出勤停止になり、不安な日々が続いた。コロナは得体のしれない感染症だ。いきなり症状が悪化し、30分前に会話していた人の呼吸が止っていることもあった。利用者と職員の命、どこまで守れるのか、いつ終わるのか、修羅場であった。若いスタッフが泣きながら「いつまで続くのか」と訴えてくることもあった。しかし、彼らは利用者の前では黙々と仕事を続けた。理事長が直接、足を運び、具体的な対策を提示したことは、真に救いだった。「私たちは見捨てられていない」と心から思えた。目に見える応援体制で乗り切ることができた。

集団感染が報道されると連日、報道陣が正面玄関前に張り付き、職員は裏口から入らざるを得ない状況だった。「危機意識が足りない」、「何をやっているんだ」などのクレームにも耐えるしかなかった。住民からのバッシングもあり、精神的につらかった。その中で隣の小学校の窓に「北砂ホーム頑張れ」と応援メッセージが貼られており、涙が出た。

非常につらい経験だったが、私たちが利用者の命を守ったのだと達成感を感じている。前を向いて仕事ができるようになった。みなさんの支援がいちばんの収穫だった。