コロナ禍と障がい者の生活

私の信条

コロナ禍、休業命令や出勤制限、交代勤務となってステイホームで過ごしています。いままで慌ただしくしてきた日々はなんだったのか。会議や行事がなくなるとこんなにも気持ちに余裕ができるものなのかと感じています。なれない仕事や新たに取り組まなければならないこともたくさんありますが、対人ストレスの減少が果たす役割は大きかったです。

実際、自殺率も下がっています。2019年4月の全国の自殺者数は、1814人だったのですが、先月(2020年4月)は、1455人。昨年よりも359人も減っています(約2割の減少)。ちなみに3月の自殺者も前年と比べて152人も減少しています(前年比約1割減)。やはり、キツい人間関係や日々の仕事のストレスがなく、のびのびと生活できるのでしょう。経済的な充実も大切ですが、心の余裕がいちばんなのかもしれません。ほんとうにコロナ以前の忙しい日々を望んでいるのか。正直、いまのままでいいかもしれないと思うときがあります。

さて、ではこの間、障がいを患っている方はどうしているのでしょう。結論から言うと、2極に分かれました。やることがなくて「ストレスで調子を崩す人」と経済活動の停滞とステイホームが自分のペースとちょうどよく、「元気になる人」です。

知的障がい・精神疾患を患う方で自宅に一人でいること自体、かなりつらいという傾向のある人がいます。このような方は、やること、話をする人がいないと落ち着かないのです。彼らは自らやることを見つけて、何かに取り組むということが苦手で、一人でいることを拷問のように感じます。ちなみにこのような人のために江東区には「エンジョイクラブ」という成人の障がい者向けの余暇活動クラブがあります。

上記のような障がい特性を理解したうえで、「就労支援施設が閉所しているのでやることがなくヒマすぎて死にたい」という相談を受けると、とても複雑な思いを抱きます。私たちは障がいをもった人に自立してもらいたいがために就労支援をしています。ところが、彼らにとって就労支援施設に通所することは単なる「ヒマつぶし」だと主張しているように感じるのです。

他方で、一部の障がい者には「休みをゆっくり過ごすという概念がない」ということも改めて理解しました。自閉的傾向がある障がい者は、生活リズムが乱されること、ルーティンが崩されてしまうことに耐えがたい苦痛を感じます。コロナ禍の現状、普段通りの規則的な生活が送れないことに苦しんでいます。

いずれにしても「ヒマで死にたい」という訴えを聞くに、「障がい者の自立」というのは、彼らが自分で考えた目標ではなく、支援者が利用者に押しつけたものであると痛感します。就労支援と平行して、彼らにとっての「自立」とは何か、ということを考える場を設ける必要性を感じています。また、特別支援学校の段階から彼らが主体的に取り組める趣味やスポーツを見つけることが必要でした。空白の時間を埋める術のない彼らがステイホームのときに一人で打ち込めることを彼らが子どもの頃の早い段階から身に着けていればよかったと考えます。

利用者の通所が少なくなって、支援者の心に余裕ができたいま、立ち止まって、障がい者の自立とは何か、彼らにとっての生活とはどのようなことかを再考していきたいです。