福祉職ハラスメント その2

医療・福祉

〔反動的対応は間違い〕

福祉職ハラスメントがあるからといって、決して「反動的」になってはいけない。反動的な態度とは、ハラスメントを方便にして利用者に教育的・高圧的に接する、一方的に非難する、などです。これは私的な制裁にほかなりません。泣き寝入りをしろと言っているわけではありません。対応するときは法に則ったしかるべき手続きを用いるべきです。また実際的にハラスメントに遭った場合、身に危険が及ぶということであれば正当防衛も私は否定しません。しかし、「調子に乗った老人たち」を矯正するという対応は少なくとも福祉職員の業務の範囲ではありません。

〔「利用者本人と社会」の問題〕

①利用者と福祉職員は対等な関係

社会的に福祉サービスがどのようなものか十分に理解されていません。福祉サービスの利用者は、消費者や顧客ではないのです。利用者は、事業者と「対等」の立場です。無論、ビジネスの世界でも顧客の横暴は許されません。しかし、顧客のわがままに応えることで相応の利益を享受する商売もあります。福祉サービスは、ビジネスの世界とはちがいます。介護保険であれば、利用者の負担額は1割です。残りの9割は保険料と税金から支払われています。厚労省が言うところの「共助」のサービスです。その意味でも利用者と福祉職員(事業者)は、「対等」なのです。

営利企業での事業者と顧客の非対称性(「オレ様は客だ!サービスしろ!」)を利用者は福祉職員にも求めてきます。「お客様は神様」だから客のわがままを受け入れるのが当然だと考えているのです。

②公私の区別がいい加減な状況

さらにここが難しいところですが、介護福祉は実生活を支えるサービスです。ある程度、親しみやすさが求められます。「対等」であるがゆえに家族や友達のような関係を求めてくる利用者が存在しています。

「家族的雰囲気での施設」、「信頼関係の構築」が社会的にも評価されます。親しみやすさこそ、援助の到達点だと考える専門職もいます。

以前、女性の福祉職員が「利用者から『おばさん』と言われても親しい仲だからハラスメントと思わないし、腹も立たない」と話していました。そのような考え方もあるかもしれません。しかし、業務上でクライアントから「おばさん(おじさん)」と言われるような一般の職業分野があるのでしょうか。

利用者と職員があだ名で呼び合ったり、卑猥な冗談で盛り上がったりする関係に私はあまり健全なものを感じません。介護福祉が日常生活上の支援であるとしても、業務と私的領域の区別は厳格につけられるべきです。

福祉職員の評価が社会的に低い原因の一つに「どうせ福祉の仕事なんて子どもと遊んだり、年寄りの相手をするだけだろう」という社会の誤った認識があります。社会的に親しみやすさが福祉に求められているとしても公私の区別がついていないことは、ハラスメント温床であると思います。公私混同が普段の業務なのであれば、介護福祉がまっとうな職業かどうかさえ疑われるでしょう。