江東区での集団感染と行政の役割

私の信条

いろいろなお知らせでご報告していますが、江東区の特別養護老人ホーム北砂ホームで起きたクラスターについて改めて考えていきたいです。

仙台堀川公園に面して、環境も日当たりもいい北砂ホーム(1992年開設。定員100)。2020年4月下旬に51名もの集団感染が起きて、5人の方がお亡くなりになりました。

NHKの番組でも紹介されましたが、運営しているあそか会の対応が早く、5月中にクラスターを抑え込むことができました。6月21日現在では、陽性者もゼロだそうです。

入所者を病院に搬送するのは、要介護の高齢者ですので環境変化による負担が大きいのではないかという判断から老人ホームの一部を病院化し、ホーム内で陽性患者の治療にあたりました。PCR検査もあそか会が独自に実施。全職員、全利用者を迅速に検査したそうです。職員の方々が自宅待機となって、仕事が手薄になってしまったところには、別の施設から応援要員を呼びました。現場の看護師や介護職員には危険手当を支給したといいます。クラスターが発生してからの対応としては、しっかりしたものだったと思います。

あそか会は、伯鳳会という全国規模で病院や老人ホームを展開している医療法人グループの一員の法人です。だからこそ、このような対応が可能だったのでしょう。

このとき江東区の行政機関は、どうしていたのでしょうか。保健所が対応にあたっていたといいますが、行政が陣頭指揮をとる姿勢はありませんでした。北砂ホームを運営する法人が規模の大きいのをいいことに対応を任せきりにしていたようです。

感染拡大は、老人ホームの自己責任ではありません。老人ホームは高齢者の介護に専念する施設です。ほんとうは地域の公衆衛生に責任をもつ当該自治体が感染に関して中心的に対応するはずなのです。たまたま北砂ホームの運営が大きな法人だったので、迅速で効果的な対応ができました。しかし、小さい法人では、人員確保もPCR検査もできません。介護崩壊となります。欧州5か国では、コロナによる死者の約半数が高齢者施設の入居者だといいます。お年寄りは、重症化の危険が高いのです。今後、クラスターが発生した場合に備えて、行政責任としてきちんとした対策を講じてほしいものです。

ケアワーカーズユニオンは、江東区へのコロナ対策の要望書を提出しました。近いうちに改めて以下の点に焦点を絞って再度、要望していきたいと思います。

①PCR検査実施体制の整備

②クラスター対策(職員派遣など)

③感染予防の適切な実施

④情報共有とネットワーク確立

要望していくにあたっては、介護事業所や現役ケアマネジャー、地域包括支援センターからもヒアリングをしたいと考えています。

行政は、災害や疫病のような国民的な課題を解決する責任があります。しかし、国は、地域包括ケアシステムという名のもと「自助と互助で解決するのがカッコいい」というムードを作り上げようとしています。これは行政責任の国民への押しつけです。公助と共助が適切に発動されるような行政を実現するためにも自治体への要請を行い続けていきたいです。