福祉の常識は、世間の非常識?!

私の信条

「生活の知恵!寝たきりで入浴ができない方の洗髪に大人用紙おむつを使ってシャンプーハットを作りましょう」という新聞記事がありました。紙おむつを利用したシャンプーハットは、介護職員により考案されたそうです。これを使えば、「ベッド上での洗髪でもふとんがぬれてしまうことはありません。みなさんも試してみてください」とのこと。

しかし、この記事に対して、「おむつで洗髪とは何事だ!寝たきりの人を馬鹿にしている」、「未使用のおむつとはいえ、洗髪に使用するのは抵抗がある」という投稿が相次ぎました。

おそらくシャンプーハットを考案した介護職員にとって、紙おむつは自分の身の回りにあり、利用できる道具のひとつだったのでしょう。それを利用することはごく自然な選択だったわけです。しかし、排せつに用いる道具を頭にあてるというのは、世間一般の常識からするとかなりズレています。

いったん医療・介護の世界に身を置くと、世間一般の常識から乖離してしまうことがあります。私たち福祉専門職が陥りがちな過ちです。

考えてみると行政サービスもタテ割りですが、それを非常識と考える視点が役所にはあまりありません。福祉サービスもタテ割りが当たり前という状況です。

私は現在、障害者の支援施設で仕事をしています。障害者のみを対象としています。ですので、「高齢者、子どもの福祉ことはわかりません」ということがある程度通用してしまいます(もちろん、障害者以外の相談があった場合は、その専門機関につなぎます)。

このことを民間分野に目を向けて考えると、「クーラーのことはわかるけど冷蔵庫のことはわからない電気屋さん」みたいなものです。自分の対象以外はわからないタテ割り福祉の非常識がまかり通っているのは恥ずかしいことです。福祉のローカルルールにどっぷり漬かってしまうと、世間一般のルールから逸脱していてもそれに気が付きません。

組織内のローカルルールは、それなりの歴史があって作り上げられていったものなのでなかなか見直せないものです。組織の常識を疑う、自分を振り返ることが大切ですが(福祉職の中では「自己覚知(self-awareness)」という言葉をよく使いますがこれも世間一般からしたらヘンテコな言葉)、それは容易にできることではありません。

第三者委員のような人が気軽に出入りできる職場になっているといいですね。またいろいろな別の機関との連携することで、自分の組織の見直しにつながるでしょう。積極的に別の事業所とかかわりをもつようにするのもいいと思います。

批判精神も重要です。「タテ割り行政だからタテ割り福祉が当然。役所が決めたことだから自分は関係ない」という姿勢ではよい支援はできません。役所の不合理な決定には異を唱え、改善を求めていかなければなりません。役所に寄り添うのではなく、利用者に寄り添うことを第一に考えられるといいですね。専門職として世間一般の常識とかけ離れないように自身を律し続けていきましょう。