高齢者の住まい

まちづくりと環境

今回は高齢者の住まいについて考えます。なにせ東京は住まいに関して悪いことづくめなんです。家賃は高く、部屋はせまい。住環境としては最悪です。地域のつながりはほとんどない、キビシイ個人主義。人口が多いから行政の目も行き届かない。人に頼るのをよくないことと思っている高齢者も多い。助けを求めることもできない、助けてもらうこともできない、八方塞がり状態です。

お金も身寄りもない高齢者が要介護状態になると何やかんやで自治体の支援が入ります。行政も「わがまちで孤立死を発生させたくない」と必死なのです。そして、心身状況が悪化して、在宅生活が難しくなると「施設入所」が提案されます。

生活保護を受給している人は、担当の生活保護ケースワーカーが入所先の施設を手配してくれるから安心・・・ということはありません。非常に幸運ならば地元の特別養護老人ホームに入所できます。しかし、ほとんどの場合、地元から遠く離れたところにある有料老人ホームへの入所となります。地方の有料老人ホームで都市部の生活保護の高齢者を受け入れる施設はいくつもあります。

「施設入所ができるだけいい」と思われるかもしれません。しかし、高齢になってから、まったく馴染みもなく、知り合いもいない土地に行くことは精神的にかなりつらいと思います。

ところで、「お泊まりデイサービス」をご存知でしょうか。「デイサービス」は、昼間に日帰りで利用できる通所介護サービス。それにプラスして宿泊もできるというものです。公的介護保険のなかにはない、民間の自費サービスです。利用料金が安く、ところによっては、一泊2千円以下の事業所があります。とはいえ、安かろう、悪かろうというわけで、サービスの質が正直ビミョーな事業所も見受けられます。「お泊まりデイ」自体は10年以上前からあって、一部に貧困ビジネス的なところも出てきたため、2015年には届け出制となり、厚労省から運営ガイドラインも出ています。

東京で身寄りも資力もない高齢者は、在宅生活が困難になると、「お泊りデイ」を利用した施設入所になることがあります。

いずれにしても、安心できる住まいで暮らすことは私たちの権利です。「施設から地域へ」ということで在宅サービスの充実が高齢福祉施策の中心ですが、身寄りもお金もない人は地域で孤立していくだけです。「地域が高齢者を支える」というのは、地域住民のボランティアに支援を任せることではありません。地域行政が責任を持って、孤立している人をサポートするということです。そもそも東京の東部地区は、下町といっても基本的に団地の町。戸建てが多い地域と違って、地域のつながりが作りづらいのです。

長年、がんばって働いてきて、高齢になり、行き場を失い、住みなれた場所から遠く離れたところで最後を迎えるなんて悲しすぎます。

住まいを確保する公的制度が貧弱なのです。公的な責任で安心して人生の最後を迎えられる住まいを用意するべきだと思います。