江東区の新たな福祉事業にもの申す

私の信条

今回は、新年度になって発表された江東区の福祉事業に関して、いくつかピックアップして辛口に解説します。

◎介護・障害福祉サービス従事者確保事業

職員確保のために事業所に20万円支給する事業です。今回、補正予算でこれをやります。大久保江東区長によれば、「介護人材確保は当初予算でやり残した部分」だそうです。それにしては、年額20万円、安すぎないか。求人サイトへの登録費用やホームページ改修費用、そして、人材紹介会社の利用の費用に充ててもいいそうです。区の担当者によると「人材紹介会社の利用に関しては慎重に検討した結果、応急的に認めるもの」とのこと。でも一般的に人材紹介会社を遣えば、80〜100万円くらい当然にかかるものだが・・・。

◎基幹相談支援センター

障害福祉の総合相談機関です。とうとう江東区にもできます。2025年度中に扇橋の障害者福祉センターの1階に設置されるそうです。もう10年近く議論してきましたから、悲願の設置です。

しかも、江東区が直営でやるのです。これには驚きました。民間の社会福祉法人への委託ではないのです。いろいろ事情があると思いますが、いちばんの理由は、できる法人がないということでしょう。障がい者の相談は、非常に幅が広い。「3障害」つまり、「身体・知的・精神」、加えて障がい児、医療的ケア児なども対象です。江東区内に支援対象を問わない社会福祉法人もありますが「基幹」で仕事をする人材がいない。どこの法人も人材不足なのです。

では、江東区外の法人はどうか。たとえば塩浜にできた障がい者の入所施設は、他区の大きい社会福祉法人が経営しています。ただ、「基幹」を担えるかというと、いまだ地域に根差していないという点で難しい。江東区の障害福祉の歴史を知らない法人がいきなりできる仕事ではないということです。

その点、直営がいいのは、役所がこれまでの歴史的経緯を把握している点です。また、江東区ではかつて直営の障がい者施設があり、そのときの職員が現在もいますし、保健所が障害福祉のかなりの部分を担ってきました。役所でまんべんなくフォローできます。

◎地域福祉計画の改定

長らく江東区に存在せず、2022年にようやく策定された「地域福祉計画」。それまで個別の計画はありました。介護保険の計画、障害福祉の計画、こども支援の計画、地域福祉の計画とバラバラな感じでやっていたわけです。

本来は、これらを統括するの「ザ・計画」(上位計画)として、地域福祉計画が存在していなければいけなかった。なので、地域福祉計画の策定が発表された当時、福祉関係者は、そりゃあ期待しました。タテ割りだった福祉分野が互いに連携し、協働できる計画を夢見ていました。しかし、完成した計画は実効性のある取り組みがほとんど示されず、「地域の人たちとのつながりが大切なんだよ〜」しか書かれていない残念な内容でした。

ですので、改定作業で少しはよくなるだろうと私は思ったのです。しかし、今回の江東区の発表では「地域の人やボランティアへのアンケートを通じて作成します」とのこと。そうじゃないだろ!と思います。

福祉各分野にヨコ串を刺す具体的な提案を行政と事業者が考えなくてはいけないでしょう。それには、たとえば、実際に福祉の仕事に従事している人にヒアリングすること、行政内での連携がどうあるべきか議論し、改善点を見出し、実行スケジュールを立てることなどが考えられます。

江東区の行政は、地域包括ケアシステムがほぼ完成していると言っています。そのわりには、支援がタテ割りすぎてヨコの連携がない。だから、住民アンケートでお茶を濁すのではなく、地域福祉計画の本旨である「地域における高齢者の福祉、障害者の福祉、児童の福祉その他の福祉に関し、共通して取り組むべき事項」(社会福祉法第107条)を一体的に実施できるような計画をがんばって策定してほしいのです。