中高年のひきこもり その4

私の信条

〔「その1」~「その3」までのお話〕

中高年ひきこもりの方々を支援するのは、「親」ではなく、「国・行政・社会」です。

したがって、親や家族にひきこもりの当事者を世話する責任を全面的に負わせる現在の状況は問題です。子どもの世話に一生を捧げて、親の人生を破壊してしまうからです。

〔親、保護者への影響〕

ひきこもる行為が親や保護者に与える影響は甚大です。ひきこもる子どもの面倒をみる親は、子どもによってある意味、支配されているといえます。客観的な状況からみると、8050問題は、50代の子どもが、ひきこもりによって80代の年老いた親を従属させている構図です。

ですので、ひきこもり行為は、親に対する「虐待」と考えることができます。もちろん、ひきこもっている子ども(中高年)も社会の犠牲者です。しかし、ひきこもりが虐待に転換せざるを得ない状況が現れてしまうのです。

〔ひきこもりの人を支援する法的根拠〕

実際に現場では虐待対応としてのひきこもり支援が実施されます。そして、そうすることによってひきこもり支援に法的根拠を与えることができるのです。

実は、ひきこもりの人に対する公の支援は、非常に恣意的なのです。たとえば、精神保健福祉を担う保健所の保健師が支援する、中高年ですが青少年の延長上として教育委員会の部署が支援する、経済的に困窮しているので生活困窮者自立支援窓口で対応する、など支援機関がまちまちでした。

ひきこもりの人は、公的支援の対象になりづらい状況なのです。というのも、ひきこもりの人を支援する根拠となる法律が不在だからです。

ひきこもりの人を支援するための法律はありませんが、既存の法律を援用して、支援根拠にすることはできます。私見では、それを虐待防止法に求めることができると考えます。

〔福祉制度における虐待対応〕

福祉的な虐待対応は、法律を根拠に執行されます。現在、虐待防止法は、4つあります。児童・高齢・障害者・DV防止、と対象ごとに分かれています。

現行法では、虐待に以下の5類型を想定しています。①身体的虐待 ②心理的虐待 ③ネグレクト ④経済的虐待 ⑤性的虐待 8050問題のおけるひきこもり行為は、どこに該当するでしょうか。

虐待防止法を適用させると、50代の子どもが80代の親を虐待しているという構図で高齢者虐待に該当します。類型的には、心理的虐待、経済的虐待です。また介護が必要な親の面倒をみないで放置しているとしたらネグレクト(介護放棄)にもあたります。

〔養護者の支援〕

高齢者の虐待防止法の正式名称は、「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」です。ここでポイントなのは、『高齢者の養護者に対する支援』という文言です。

高齢者虐待防止法は、高齢者のためだけではなく、「養護者(虐待されている高齢者と一緒に暮らす者)」の支援も同時に含むのです。ということは、高齢福祉の支援者(具体的には地域包括支援センター職員)がひきこもり支援を実施する法的根拠となりえるのです。

実際にこの法律を援用して、地域包括支援センターが養護者(ひきこもりの人)を支援することもあります。その詳細はまたの機会にお示ししたいと思います。

〔さいごに〕

ひきこもりに関するお話は、とりあえずこちらで終わりにしたいと思いますが、これを書いているときにさまざまなご意見や研究に触れ、私の考えも変化してきました。当面の考察を示しましたが、また新たにどこかで書いてみたいです。