ICF(国際生活機能分類)を見よう!

私の信条

福祉専門職として基本的なことを忘れているのではないかという指摘をします。何のことかというと「ICF」です。

福祉の資格を取得していて、ICF(国際生活機能分類)を知らないとはいわせません。絶対に試験に出ますので見たことくらいはあるでしょう(福祉専門職でない人はググろう!)。とくにICIDH(国際障害分類 1980年WHO)からICF(2001年)への移行の議論は毎年のように国家試験に出題されています。

以下、ICFの大雑把な説明。

WHOが採択し、加盟国に勧告している、健康状態、心身機能、障害の状態を分類した医療基準。これまで障害や疾病のマイナスの側面ばかりが強調されていましたが、そうではなく、ICFは、「強み(できること)」に着目した立場を提唱しています(医学モデルから生活機能モデルへの転換)。そして「主観的な障害(体験としての障害)」を重視しています。

私たち支援者は、利用者の障害や病気に注目して支援しがちです。でも、それは違うんです。障害や病気がなくなれば、生活がよくなると思ったら大間違い。ICFは、逆転の発想で「生活が改善すれば、障害や病気が改善する」という指摘をするのです。 そして、それには環境因子や個人因子が相互作用的にからみあっています。

どういうことかというと、いかに障害や病気から回復しても、町の構造が障害者にやさしくなければ、活動できないので再び障害の状態に戻ってしまう。あるいは、精神科病院から退院しても、社会的な役割を喪失していて、自宅に引きこもっていたら、再び入院することになってしまう。

生活が改善するには、バリアフリーの環境が必要かもしれない、良好な人間関係がある家庭環境も必要かもしれない、さらに個人的な生きる意欲を充足させる社会的役割や楽しみも必要かもしれない・・・ということです。

その人らしい生活、すなわちその人の望む生活が実現しなければ、病気や障害からの回復は難しいのです。人間的な生活を取り戻すことが、ICFの指摘する「健康状態」です。

ICFが私たちに要請するのは、BPSDや行動障害に焦点を絞るのではなく、利用者に寄り添い、いままでどのような生活を送ってきて、これからどのような生活を望んでいるか類推し、支援していくことです。そして、病気や障害を数え上げるのではなく、利用者の望む生活をいっしょに考え、人間的尊厳を回復させて、個々の人生の向上を図ることなのです。

認知症の支援方法のひとつにパーソン・センタード・ケアがありますが、これはICFの素朴な実践活動だと思います。さまざまな福祉的支援の方法論は、ICFに立ち返って考えれば当たり前の話だと気づかされます。

この文章は、たまたまICFを調べる機会があったことが、きっかけになっています。ケースワークの基本的なことがほとんどICFの概念で説明がつくものだなあと感心してしまいました。

ある医師から「福祉の専門職なのにみんなICFのことわかっていないんだね」と言われたことがありました。確かにそうですね。試験のときに覚えるくらいでICFの真意をきちんと理解している人は実は少ないのではないでしょうか。