家賃が高すぎる! 後編

まちづくりと環境

(前編からのつづき)

事例を挙げて説明しましょう。

仕事がら高齢者の家を訪問しますが、経済的に困窮している人によく会います。

民間アパートで一人暮らしのXさん(79歳・男性)は、71歳のときに妻に先立たれ、以来、独居生活を続けています。子どもはなく、兄弟が東北地方にいますが、兄弟たちも高齢のため、年賀状のやりとりくらいの交流しかありません。脊柱管狭窄症を患っており、5分程度の歩行でもひどい痛みが出ます。要介護2の認定を受け、デイサービスやホームヘルパーを利用している状況です。

Xさんは、家賃が8万円の2DKの古いアパートに暮らしています。年金の月額が約14万円のXさんにとって家賃は重い負担となっています。家賃を支払い、介護サービス利用料・医療費、宅配弁当、光熱水費などの固定費を支払うと自由に使えるお金は、よくて2万円程度です。ただ、200万円の貯金があるので、これを取り崩さないようになんとか年金の範囲内で家計のやりくりしています。好きなタバコも本数を減らし、節約生活を送っています。

先日、エアコンが故障してしまいました。高齢者にとって暑さ寒さは死活問題です。ライフラインの復旧ということで修理業者に依頼したところ、古すぎて直せないとのことでした。仕方なく、ヨドバシカメラで工事費込6万円のものを購入しましたが、「貯金を取り崩すことになった」と嘆いていました。

もっと家賃が安いところに引っ越すといっても、Xさんには引っ越し作業ができるほどの気力・体力はありません。都営住宅の抽選に何度も応募していますが、もし当選したとしても手続きや引っ越し作業の段階でつまずいてしまうと思われます。

今後、Xさんは施設入所も視野に入れなければなりません。とはいえ、特別養護老人ホームに入所するのは要介護3以上という要件がありますし、入所の手続きを本人ができるのかどうかさえわかりません。

Xさん自身、現役のころは、メーカーに勤務し、定年まで勤め上げました。カメラが趣味でリタイア後は専業主婦であった奥さんと旅行に行くなど平穏な日々を送っていました。しかし、妻を亡くし、病気を患った現在、貯金が底をつかないようビクビクし、先行きを心配しながら生活しています。それだけでなく、少ない年金収入で好きな趣味を楽しむこともできず、タバコを節約しながらテレビを観て過ごす日々です。

高度経済成長の時代を一生懸命に働き、日本の繁栄の貢献した労働者の老後がこんなにも経済的に不安定な状態なのです。

もし家賃がかからなかったら、そこまではいわずとも現在の8万円の半分、4万円だったらXさんの生活は、ずいぶん余裕のあるものになることでしょう。

いまの日本社会は衣食住の「住」がまったくもって不適切な状況にあります。住まいのために経済的に困窮するようなことは、本来あってはならないのです。健康で文化的な生活が保障されてないのと同じです。これは自己責任ではなく、国が責任を負い、国レベルで検討しなければいけないことです。

「住まい」のことに声をあげていきましょう!