江東区の住宅問題

まちづくりと環境

今回は江東区の住宅問題を取り上げます。以前も居住支援のテーマを書きました。その後、私の暮らす江東区に関して調査していたところ、さまざまなデータも集まり、私の考えも深まりました。そのご報告も兼ね、実情を説明します。

なんといっても江東区がお金持ちしか住めない地域になってきていることに危機感を抱いています。ダジャレのようですが江東区は、家賃が高騰しています。ライフルホームズという不動産ポータルサイトで賃貸住宅の家賃相場を調べてみるとワンルームで8万9千円(!)。ちなみに江戸川区は6万5千円です。

「江東区は都心にアクセスしやすい!」…新築マンションのちらしによく書かれています。世田谷区や杉並区などの閑静な住宅街にあこがれる人もいますが、東京駅周辺に出勤するとしたら断然、江東区のほうが便利。そのことに東京の住民が気付いてしまったようです。豊洲・東雲地域のタワーマンションはもちろんのこと、いまだに江東区ではマンションがどんどん建設されています。

このことに伴う人口増加で学校などの公共施設整備との調整が大きな課題となりました。江東区自治体は、ファミリー世帯向け住戸数が30戸以上のマンション建設については1戸あたり125万円の公共施設整備協力金を求めています。その影響もあり、ワンルームマンションの建設が激増。2019年以降、ファミリー世帯向けマンションの倍以上の戸数が建設されています。

さらに不動産取引状況も特異な様相を呈しています。江東区は空き家が少ないのです。全家屋数に占める空き家の割合を「空き家率」といいます。江東区は23区の中で空き家率がもっとも低く、7.7パーセント。千代田区や中央区でさえ、10パーセント以上なのに(もちろん空き家数は江東区が2万1千戸で千代田区は4千4百戸と戸数自体はぜんぜん多い。比較しているのは割合)。

これが意味しているのは、それだけ江東区で住居を求めている人が多いということです。空き家になってもすぐに新しい入居者が現れる。マンションを建設しても入居者がすみやかに埋まる。不動産業者にとっては好都合の地域なのです。だから家賃が高騰するのは当然のことです。

低廉な家賃の住居がない状況なのに東京都も江東区も今後の人口減少社会を見越して公営住宅は増やさないそうです。自治体は目立った住宅保障政策を実施していません。江東区で安心して長く住み続けられるのか非常に心配です。

これまでの議論は「福祉と関係ないじゃないか」と怒られそうですが、ここ最近、居住こそ福祉という声が強くなってきています。諸外国では、居住は保障されるべき人権とされていて、住宅提供への政府の責任を厳しく問う姿勢があります。しかしながら、日本政府は住まいの確保の課題を民間住宅市場にゆだねてしまい、市場で不利な立場にある人への手当がありません。こういった状況に対して、つくろい東京ファンドの稲葉剛さんは、「ハウジングファースト」(まずは安心できる住まいの確保)という概念を提唱しています。国は、2017年になってようやく重い腰を上げて住宅確保を目的とする支援団体を指定する制度を導入しました(居住支援法人)。住まいに係る福祉的支援は今後も進行していくことでしょう。