今回は、障害者権利条約をみていきましょう。福祉専門職の国家試験によく出るトピックです。受験する人は要チェック!
さて、新聞等で話題になっている障害者権利条約。条約を批准してから初の国連審査があり、「強制入院」、「分離教育」、「地域移行」などへの勧告が発表されたといわれています。
ただ、勧告内容は、これだけではないのです。国連が発表した総括所見(勧告)は英文で18ページもあります。9月9日に出されていますが、これを書いている時点でまだ日本語に翻訳されていないようです。
いずれにしてもこの条約について知らない人も多いと思います。まずその概要をお伝えします。
〔障害者権利条約とは〕
21世紀初の人権条約です。福祉専門職はみんな知っている「私たちのことを私たち抜きで決めないで」という有名すぎるスローガン。なにが画期的かというと、スローガンに代表されるように、あくまで障害当事者の視点に立った条約なのです。健常者が障害者を理解し、支援するという、ありがちな構図ではありません。障害者が主体となって、自身の権利を行使をして、権利侵害を正すという内容の条約です。さらに障害者の被る不利益が社会に内在しているという事実から、制度やシステムの改変を求める主張も盛り込まれています。社会的不利益をなくし、自身の正当な権利を獲得する、障害者による障害者のための人類初の条約なのです。
〔個人的な思い出〕
この条約に日本が署名したのは2007年です。そのとき私は、スローガンさえ知らないくらいでした。しかし、2014年1月に正式に批准(条約をちゃんと実行すること)したとき、福祉業界での反響はすごかったですよ。毎月のように権利条約関係の講演会が開かれていました。
条約批准の体制整備として、いろいろな障害者の権利擁護関係法ができました。障害者差別解消法が2016年から施行されるということで、法の運用に向けた研修会では、かのスローガンがいつも配布資料に書かれていました。
私の少し前の世代の人は、1981年の国際障害者年から強く影響されたといいます。いま40代から50代の人は、障害者権利条約から大きな影響を受けています。それは福祉専門職が「権利擁護」の視点を新たに手に入れたことです。当事者の権利を重視して、自己決定を尊重するということですね。
〔今回の国連審査をどうみるか〕
条約を批准するとそれが適切に実行されているか国連が審査します。今年は審査イヤーなのです。審査が終わると勧告が出されます。この勧告に強制力はないですが、なにせ国連の意見なので日本政府も重く受けとめます。
新聞に書いてあるようなトピックだけでなく、たくさんの勧告内容があるのです。たとえば、「虐待防止法を見直し障害のある人への暴力の防止をあらゆる場面に拡大すること」とかです。日本の障害者虐待防止法は、学校と病院では適用にならないですからね。
また「通勤・通学などの目的で障害者総合支援法の支援が利用できないという制限を撤廃すること」も勧告に入っています。これを国連から指摘されること自体が恥ずかしい!
以上、今回の国連勧告、非常に有意義な意見がいっぱい入っています。早く翻訳が読みたいですよ。