福祉職ハラスメントの小論も今回で終了です。最近は「介護ヘルパーはデリヘルじゃない 在宅の実態とハラスメント」(藤原るか著・幻冬舎新書)という本も出て、問題を社会に知らしめる動きもあり、いい傾向だと思います。
さて、今回はハラスメントをなくすための対応をそれぞれの立場から考えてみます。まずは国(厚労省)からいきます。
〔国(厚労省)の対応 〕
介護保険は「介護の社会化」の名のもと始まりました。介護は家族ではなく、社会が担うものです。介護概念も社会的に適切なものにしなければなりません。そのためにはもっと広報活動が必要です。介護職の給与水準が低いのも生活を支援する仕事が単純な肉体労働と思われているからです。介護・保育・福祉は、相当な頭脳労働です。国は福祉労働の概念を適正化して、福祉職の地位向上に努めるべきです。
〔自治体の対応〕
モンスター利用者に対応する専門窓口を市区町村に設けることができればいいと思います。福祉職が介護や保育に集中できるような環境作りを自治体が後押しする必要があります。あまりにもハラスメントがひどい場合は諌める視点も必要かもしれません。しかし、それは福祉職や事業所の仕事ではなく、自治体が担うべきです。またハラスメントだけの話ではないですが、報酬上の困難ケース加算、困難ケース対応の公務員ヘルパーを創設することを提案します。
〔当事者の対応〕
現在の福祉制度自体、利用当事者の生活を完全にフォローできていません。しかし、少なくとも福祉職が召使やデリヘルではないことを理解しなければ自分の首をしめることになります。福祉の仕事に就く人がいなくなればサービス自体受けられなくなってしまいます。介護を受ける側も福祉制度のコンセプトを共有するよう努める必要があります。
〔福祉職の対応〕
「認知症の利用者からのハラスメント」というのは基本的にありません。判断能力が低下しているがゆえに攻撃的になるなどは、認知症の周辺症状です。これは福祉職側の認識不足です。
「利用者から『おばさん』と呼ばれたほうが親しみがあっていい」という介護職がいました。軽口を言い合うような関係は職業意識として不適切だと思います。
福祉職自身の専門家としての意識を高めていくことが求められます。そして一方ではその専門性を社会的に広報し、他方でその理念を利用者本人とその家族にきちんと伝えていくことが大切です。
〔まとめ 〕
この小論を書いていて、みなさんからさまざまな意見をいただきました。心より感謝します。いままで仕事のなかでは、「金をはらっているんだから俺の言うことをきけ!」のような方(これはハラスメントだ!)もいれば、「その年齢でひとり者じゃあ、どうしようもないね」という方(大きなお世話だ!)もいました。いろんな人がいるんですよね。うーむ、福祉職ハラスメントなかなか奥が深い。今後も考えていって、機会があればお伝えします。