今回は社会福祉士の現状と課題についてお話しします。とはいえ、これから述べることは社会福祉士にかぎった話ではなく、福祉の職員全般に言えることです。それは、『なぜ福祉の職員が社会に対して主張・発言しないのか』という問題です。
社会福祉士は、ソーシャルワーク(社会福祉援助技術)の教育訓練を受け、それを用いて福祉の業務に従事します。ソーシャルワークとは「社会変革と社会開発、社会的結束、および人々のエンパワメントと解放を促進する、実践に基づいた専門職であり学問」(2014年の国際定義)です。しかし、定義に反して、社会の変革、開発等に積極的な動きをしている社会福祉士はごく少数です。ほとんどは事業所に属し、事業所の利益にために活動しています。社会に働きかける活動を「ソーシャル・アクション」、地域に働きかける活動を「コミュニティ・ワーク」といいますが、どちらもできていません。
社会福祉士の配置されている職場では、社会に働きかける活動がやりづらい現状がありますし、社会福祉士でソーシャル・アクションなどに取り組もうと思っている人はごく少数です。その理由は、福祉の仕事が「ケースワーク(個別支援)」であるとほとんどの社会福祉士が考えているからです。確かにケースワーク自体、ボリュームのある業務であるし、一面的には具体的な成果が見えやすいので意欲的に取り組めます。目の前の利用者の特性や生活歴を把握することはよき支援の基本です。利用者に感謝され、個別支援は楽しいのですよ。援助技術を活かし、みな熱心に取り組むことでしょう。結果として、社会福祉士は職場でケースワークにのめり込み、埋没してしまうのです。
当然ながらケースワークのみに終始して、社会的な改革を志向しないと制度がよくなりません。周辺地域に目を向けないと無理解や偏見は放置されます。ケースワークと同じ程度でソーシャル・アクション等が大切です。
社会福祉士は、ほとんどの人が特定の組織に属して、組織の利益や方針を追及する業務に従事しています。業務とあまり関係のないように見える社会変革を考えることまでは求められないでしょう。その点で社会的な活動がやりづらくなっていることは事実です。
福祉課題を社会福祉士などの専門職が社会問題として顕在化させたことがいままであったでしょうか。ほとんどがジャーナリストや迷惑を被った当事者が告発する形で社会問題化させています。福祉専門職は組織に縛られてしまっているのです。
日本政府にとって国家資格である社会福祉士が社会的発言をするのは出過ぎたマネなのです。「お前らは困っている人を支援してればいいんだよ!」という感じです。そのことを真に受けて、社会的な活動をまったくやらない社会福祉士を情けないと私は思います。もともと福祉職の給与水準は低いです。一銭にもならない社会活動に関わること自体、損なこと・・・いやいや福祉職の地位向上を図り、給与水準を上げていく社会運動も必要です。それをしない限り、いつまでも社会福祉士は低賃金でこき使われます。
コミュニティ・ワーク、ソーシャル・アクションに消極的な社会福祉士の現状は、課題というよりも怠慢として責められるべき残念な事態です。私を含めた福祉専門職自身がもっと高い意識を持ち、政治参加、社会参加を推進していかなければなりません。