〔「福祉行政」の問題〕
福祉職員が利用者からのハラスメントに遭ってしまう大きな理由の一つに国自身が福祉サービスの利用がどのようなものか国民にきちんと伝えていなかったということが挙げられます。さらにその弊害を民間事業者に押し付け、放置したことも事態を悪化させました。
①国民へのPR不足
福祉サービスを一度も利用したことがない人が訪問介護を利用したら、ホームヘルパーを家政婦と混同することはある意味、当然でしょう。もちろんサービスの利用契約時に家政婦や召使とは違うことを説明して、契約締結をするわけです。しかし、利用者は手続き上の形式的な作業と考えるので「自立支援」など福祉サービスの本質的な理念はスルーされてしまいます。
国が大々的に福祉サービスのあり方を国民に伝えるべきでした。厚生労働省は、福祉を契約制度にすれば福祉サービスに係る面倒な説明は事業者が代わりに全部やってくれると考えていたフシがあります。介護の社会化を国民が理解するのはそんなに甘いものではなかったようです。利用者も介護職員も福祉サービスのあり方を理解しないまま介護保険はスタートしてしまいました。
②行政が福祉の担い手のことも考えるべき
行政は福祉サービスのあるべき姿を市民目線でPRする必要があります。介護保険法の施行から20年近く経過したいまでも福祉サービスを家政婦の延長だと思っている人はたくさんいます。改めて国民に「福祉サービスこうあるべき」と伝えなければ、団塊の世代が75歳以上になる2025年を安心して迎えることはできません。
さらに利用者からの苦情解決窓口だけでなく、介護職員、事業者など福祉労働に携わる人たちからの相談窓口をつくり、問題解決機関も開設するべきだと思います。福祉の担い手を守ることもできず、事業委託を行うなどもってもほかです。福祉職ハラスメントは、行政がサービス提供事業者のフォローを適切にしていないことの帰結だといえます。