今回は、2019年12月に江東区北砂であった事件のレポートです。60代、70代の兄弟が餓死するというショッキングな事件でした。北砂は、私が生まれ育った町で、現在も事件が起こった団地から数分のところに住んでいます。
〔NHKニュース2月6日より〕
去年12月、江東区の集合住宅で72歳と66歳の兄弟が痩せ細った状態で死亡しているのが見つかりました。電気やガスが止められ食べ物もほとんどなく、困窮した末に死亡したとみられています。
〔発見された遺体は、体重が30キロ台と20キロ台だった・・・〕
去年12月24日のクリスマスイブ、江東区北砂の集合住宅で異臭がすることなどから通報があり、駆けつけた警察官が、男性2人の遺体を見つけました。警視庁によりますと、死後4日から10日ほどたっていて事件性はないと判断されました。その後の関係者への取材によりますと、亡くなったのはこの部屋に住む72歳と66歳の兄弟で、いずれも痩せ細っていて低栄養と低体温の状態で死亡したとみられています。体重は兄は30キロ台、弟は20キロ台しかありませんでした。
〔困窮している状況を誰も気づかなかった〕
料金の滞納で電気やガスが止められていて、電気が通っていない冷蔵庫に入っていたのは里芋だけでした。水道も5か月前の去年7月から料金を滞納し、止められる直前でした。兄弟は台東区の生まれで、およそ20年前からこの部屋で2人で暮らしていたということです。いずれも年金はありませんでした。弟はかつて運送会社に勤務していましたが、現在は無職。兄は警備会社に勤めていて、その給料が2人の唯一の収入だったとみられていますが、去年9月ごろから体調を崩して働けなくなっていました。近所づきあいはほとんどなく、兄弟が困窮していたことを知る人はいませんでした。
親族とのつきあいも途絶えていて、遺体を引き取った唯一の親族によりますと、最後に会ったのはおよそ15年前だということです。この親族は「亡くなったことを知らせる警察からの電話で、初めて2人が困窮していたことを知った。遺影もなく、葬式もせずにそのまま火葬してもらった」と話していました。
〔江東区の取組みに問題はなかったのか?〕
江東区の福祉担当の部署も、先月にNHKから取材を受けるまで今回のケースそのものを把握しておらず、兄弟は福祉の支援を受けていませんでした。区によりますと、亡くなった2人から生活保護の申請や相談はなかったということです。江東区長寿応援課長は今回のケースについて、「あらゆる取り組みをしてきたがそれでも把握できなかったもので、これまでの取組みが不十分だったとは思っていない」と話しています。
〔このような事件を起こしてはならない〕
江東区の取組みの方向性を問い直す必要があると私は考えます。高齢者施策だけではなく、生活困窮者が相談しやすいような窓口の確保、PR体制は当面の課題です。また、表向きだけインフラ事業者と連携しているようにして、困窮者支援にまったく活用されていなかったという事実も発覚しました。とある独立行政法人の団地で起こった事件です。管理上の問題はなかったのでしょうか。私が現役で仕事をしていたときもこの法人とのトラブル、対応のまずさは際立っていました。
こういうことを言っていると「問題提起ばかりで具体的な対応案を出せ」と反論されます。しかし、対応案を作り上げるにしても人もお金も足りない江東区の地域福祉行政です。江東区の本年度の孤独死・無縁死は、過去最大の294人。再発防止に本腰を入れて取組むよう働きかけていきます。