臨時報酬改定ではぜんぜん足りない

私の信条

高齢・障害福祉が軽んじられる構造をなんとかしなければなりません。このことを2026年(これを書いている時点)6月に実施予定の介護報酬の臨時改定から考えていきましょう。

高齢・障害福祉の報酬というのは3年に1回改定されると法律で定められています。直近の報酬改定があったのは2024年。ですので、本来であれば、改定されるのは2027年です。臨時的に増額改定をしてくれること自体は、国としていい配慮です。

ただ、今回の引き上げ改定率は、2.03%。現場で働く介護職にとって、処遇の改善や人材流出を食い止める水準では、まったくありません。医療職と比べて上げ幅は小さく(診療報酬3.09%引き上げ)、物価高の中で介護職の厳しさは放置されたままです。

実際、厚生労働省の調査によれば、介護職の平均年収は約400万円前後にとどまっています。昨年、厚労省が提示した「賃金構造基本統計調査」のデータによると、2024年の全産業平均と介護職員の給与の格差は月8.3万円。介護職の平均給与は全産業平均を下回る傾向が続いており、同年代・同労働時間で比べても大きな格差が残っています。

今回の報酬改定で最大1.9万円の賃上げとなるそうです。しかし、焼け石に水ですね。この金額で業界の未来が開けると本気で考えている人はどれほどいるでしょう。他産業では5%を超える賃上げが現実的に議論されている中で、この程度の改定では「介護は低賃金」という負の評価が固定化されるだけです。

さらに深刻なのは、障害福祉サービスの改定です。厚労省は、①就労継続支援B型、②共同生活援助(グループホーム)、③児童発達支援、④放課後等デイサービスの4類型について、2026年6月以降に新規指定を受ける事業所に限り、現行より低い基本報酬を適用する方針を打ち出しています。

厚労省は、これを「適正化」という表現していますが、障害福祉を舐め切った不当な報酬切り下げにほかなりません。新規事業所にかぎるといっても、そうでなくとも数が足りない、グループホームや放デイの基本報酬を引き下げたら、新規参入がなくってしまいます。ホント、どうかしているとしか思えない改悪です。

とはいえ、こういった厳しい状況を職員や事業者が甘受してしまっていることは、責められなければなりません。普段、職員は、利用者支援のみ専念にしてしまうし、事業者は、自分の事業所の利益だけに集中してしまいます。理不尽な制度改悪に反発する声をあげないのです。労働者も経営者も福祉行政全体のことよりも自分の個別的な仕事(在宅介護や施設運営など)にしか着目していないことが問題です。残念なことに、本来、福祉専門職の専売特許であるはずのソーシャルワークの理念は、支援の現場で度外視されています。だから、他機関や他分野との連携がうまくいかないし、現場から社会的な発信や国・行政への訴えかけを行う考えすらありません。理念なき実践を福祉専門職が続けている限り、介護福祉は軽んじられ続けます。

福祉関係者は、その責務として介護福祉の社会的な意義を議論して、発信していかなくてはならないのです。自分たちの仕事がいかに社会的に大切なものかをきちんと伝える努力と政治的な働きかけをしていかなければ、現状はいつまでも変わりません。

※タイトルのイラストは、chatGPTに作ってもらったのですが、荒廃感のあるカオスな絵になってますね(^^;