障害者グループホーム再編

私の信条

「子どもといっしょに入れる老人ホームはありませんか」。とある高齢(80代)の女性からの相談です。彼女は、重度の知的障害を患う息子といっしょに暮らしているそうです。息子さんの世話は母親がすべて担っていました。そのような彼女も高齢になり、自身が施設入所を考えるようになったそうです。

みなさんはどう思われますか。私はこの相談に2つの問題があると考えます。

① 親が障害を持つ息子を死ぬまで世話しなくてはならないのか。

② 重い障害を患っていても親元から離れて自立した暮らしができないのか。

現在、厚生労働省の社会保障審議会障害者部会で「障害者グループホームの再編」が議論されています。再編後、グループホームが、終の住処ではなく、自立可能な利用者であれば、3年という利用期限のうちに、民間アパートなどでの自立生活に移行してもらう(地域移行)というのです。一人暮らしできる能力を3年にわたる生活訓練を通して身につけてもらい、ホームを卒業して、地域での単身生活に移行するというわけです。

この再編議論に対して、障害者団体から猛反発が出ました。現在、反対の署名活動が展開されています。反対意見を見てみると、「グループホームは『訓練の場』ではなく生活の場』です!厚労省の見直しは、私たちの住まい方の選択を奪います!」とのこと。

しかしながら、この再編は東京都では、とっくの昔の2012年からすでに実行されていました。正確に言うと、東京都の障害者グループホームは、利用期間が3年の「通過型」と利用期間に定めのない「滞在型」の2つに分かれているのです。

いろいろな考え方があると思いますが、私は東京都のいまのやり方がまっとうだと考えます。高齢者グループホームであれば、終の住処でもいいでしょう。しかし、障害者はちがいます。彼らも普通に仕事をして、結婚をして、自立した生活を営む権利があるはずです。ずっと共同生活でいいのでしょうか。

「成人しても親が子どもの世話をする」、「入所施設で暮らす」ではなく、「地域で自分の好きなように生きる」という権利がだれにでも確保されるべきです。これこそがノーマライゼーションです。親御さんや福祉職員がパターナリズム(なんでもやってあげること)に陥り、自立生活を奪うことなどあってはなりません。障害当事者の力や可能性をもっと信じてもいいのではないでしょうか。

実際、3年で卒業しても、アパート暮らしがうまくいかず、実家に戻って親と暮らす人もいます。滞在型を20年近く利用している人もいます。それでもいいじゃないですか。トライ・アンド・エラーを繰り返して、自分の好きな生き方を探していければいいのです。親だって、いつかは亡くなります。いずれは一人になるのです。

通過型からの卒業といってもきちんとアフターフォローして、地域移行します。追い出して終わりではありません。一人暮らしがどうしてもさびしいという人は、滞在型にずっと住んでいればいいのです。

現在の就労偏重の障害者の自立支援には反発しか覚えませんが、グループホームの再編に関しては、地域移行をゴールとすることがいいと私は考えています。