福祉のミッションとは 後編

福祉のミッションとは その他

(前編からのつづき)

こんなことがありました。福祉職員が経済的に困窮している人の就労支援をしていたところ、うまい具合にその人が就職できました。ところが、数か月後、自分の働いた給料をギャンブルに使いこんでしまったのです。

宵越しの金を持たない刹那的な生き方がその人にはとても似合っています。でも福祉関係者的にその生き方はチョット・・・。

利用者の自立支援とかエンパワメントとか言われます。けれど「その人らしい生き方」とは、現実と折り合いをつけることでもあり、そう簡単にはいきません。個々人のニーズを把握して、しっくりいく生き方を共に考えていく・・・考えてみるとわれわれの仕事は、ビジネス一般のように市場、顧客満足度を調査・計測できる類のものでしょうか。

最近感じるのは、そもそもの社会保障の捉え方に誤謬があるのではないかということです。うまく言えませんが、おそらく「福祉」、「教育」などは経済的な指標で評価できない分野なのでしょう。それを経済効率的な枠組みで捉えるのは、身長を測るのに体重計を用いているようなものです。

この議論は、業務の効率化のこととは別の話です。作業の動線を検討する、事務を効率化するなどの業務上の努力は当然にしていくべきものです。また定量化できる部分は大いに統計的調査を使って研究し、活かしていけばいいのです。

しかし、サービスの質、ことに「その人らしさ」への貢献がどの程度だったのかは計測しがたいものがあります。どちらかといえば、芸術や文学の評価に近いのでしょう。

以上をふまえて、福祉のミッションを強引に述べるならば、「いまそこにいる利用者の訴えに真摯に対応する」ことではないでしょうか。目の前の利用者の窮状がまさに社会保障の「いま」を反映します。ビジネス的な視点は関係ありません。福祉は、利潤の追求でも金儲けでもなく、困ったときはお互いさまで支え合っていくことがゴールなのです。

ですので、(私と同じ)福祉職のみなさん、福祉的支援の現場においては、ビジネス的視点や社会的企業のやり方などは参考程度にとどめておけばいいのです。医師や看護師が医療の分野で活躍しているように私たち福祉職も福祉的支援のスペシャリストとして誇りを持って社会に発言し、胸を張るべきです。福祉のプロとして力を合わせてわれわれの仕事を盛り上げていこうじゃありませんか!