〔福祉職は利用者のことしか知らない!〕
現場の福祉・介護職員は福祉制度のことをよく知らないのです。「そんなバカな、福祉職が福祉制度を知らないでどうする!」と思われるかもしれませんが、実際そういう人が多いのです。
ある意味、これは当然かもしれません。福祉の仕事でいちばん役に立つのは、『目の前の利用者さんに関する知識』なのです。福祉職は自分が担当しているお年寄りや障がいを持った人たちの生活歴や性格、嗜好などを必死に知ろうとします。福祉の仕事は利用者のことをいかに知ることができたかで良し悪しが決まります。現場で力を発揮するのは、8割方、利用者に関する知識です。
福祉の国家資格を持つ人は、試験勉強の一時、福祉制度に詳しかった。ですが、現場仕事をやるようになると一瞬にして制度のことを忘れます。福祉制度は法律改正が非常に多い。そのとき学んだ制度は、すでに過去のものとなっていることもよくあります。
〔利用者支援に焦点を絞りすぎると・・・〕
目の前の利用者から非常に多くのことを学ぶことができます。単にその人の嗜好や性格だけなく、福祉支援の姿勢―他人に寄り添うことはどのようなことなのか―を学ぶことができます。福祉の仕事の中で最も尊い瞬間の一つだと思います。
しかし、注意しなくてはならないのは、①自己満足に陥りやすい ②制度や仕組みを学ばないと将来的に利用者の生活はよくならない、ということです。
利用者から学ぶときには、中立的・客観的な視点が要求されます。利用者と一対一となったときに自分に厳しい倫理意識を課していなければ際限なく、いい加減な関係になります。ケースカンファレンスのときに利用者の悪口を言い、悦に入っている職員を見ると、その自己満足、意識の低さに暗澹たる気持ちとなります。利用者から学ぶことは、自分自身を点検することでもあります。
また、制度や仕組み、理論を学ばないと、将来的に利用者本人や自身の業務に支障をきたすことになります。現行制度が最良のものかどうかわかりません。利用者に「規則だからできません」を押し付けている可能性もあります。福祉の仕事には現行システムを改善して、さらに利用者の生活の質を高める役割もあります。現状を鵜呑みにしていたら、利用者の生活は現状維持かそれ以下になります。つねに批判意識を持ち、改善の活動を続けていかないと福祉現場はよくなりません。なにが最良の仕組みなのか、答えはないので、改善活動を終わりなく継続していかなければならないのです。
〔まとめ〕
現場と理論、バランスよく学んでいかないと長い目で見て利用者のためにも自分のためにもなりません。広い視野を持って福祉の仕事に取り組みたいですね。