前の投稿でも書きましたが、かねてより入所施設を利用する際に身元保証人を求められることが、身寄りのいない高齢者にとって施設利用のハードルになっています。身寄りのない高齢者にとって身元保証人の確保は、制度の隙間として残されてきた課題です。これは、全国的な問題となっているのですね。
現在、厚生労働省が身寄りのいない高齢者の金銭管理や入院・入所の手続き、死後事務などを支援するための国の新制度を検討しており、来年度、社会福祉法を改正し、全国で広く支援を提供することを目指しています。
社協が実施している「日常生活自立支援事業」(東京では、「地域福祉権利擁護事業」といっているところもあり)を制度改定して、シン・日常生活自立支援事業を作る計画が進められているみたいです。
私も身元保証人の件で、けっこう相談を受けます。ほんとうは、身元保証人がいないことを理由に入所を拒否してはいけないと厚労省から毎年のように通知が出ているのですが、ぜんぜん守られていないのです。
たしかに入所した人の事務手続きをしてくれる親族や亡くなってしまったときの対応をしてくれる人がいないと施設側も困ってしまいます。入所費用を請求できなくなってしまう恐れもあり、施設の経営にも関わる問題です。
とはいえ、身寄りがないというのは、ほとんどがその人の責任ではありません。たとえば、こどもがいないの90歳の入所者がいたとすると、その人の兄弟や親戚もかなり高齢であることが考えられます。しかも、親族関係が遠方に住んでいることもあります。
「将来的に特養に入ることになるから結婚して、面倒をみてくれるこどもがほしい」と考える人はあまりいないでしょう。だから、身元保証人がいないというのは自己責任ではないのです。国や自治体が施設側も利用者側も不利益を被らない対策を講じなければならないと私は強く思うのです。
今回、江東区の高齢者施設はどうなっているのか調べてみたいと考えました。役所の介護保険課に調査をしてほしい旨を伝えたのですが、「協力できません」(理由不明)とのことだったので、9月のまだ暑い盛りに独自で調査をしてみました。ちなみにこの調査結果をもって、11/28に行われた江東区議会の本会議の一般質問で、「特別養護老人ホーム等における身元保証人問題について」という質問をしました。
さて、前置きが長くなりましたが、以下の調査報告をしていきたいです。
〈目的〉
調査は、江東区内の施設利用の現状を確認し、利用者と施設の双方が安心して入所できる仕組みや方法等を模索することが目的です。
〈アンケート原票〉
〈「高齢者施設における身元保証人に係る調査」結果報告〉
◎調査結果に関して
計38カ所の施設(特別養護老人ホーム 14か所、グループホーム24カ所)に調査をご依頼した結果、12施設からのご回答がありました(調査票は、2025.9.9に発送)。
回収率は、12/38=約31.6%です。
実態把握・参考資料としての有効性
社会調査・行政アンケートの現場では、30%前後あれば一定の傾向を把握できる最低限の水準とみなされることがあります。
厳密には、統計的推測(全体を推定するための母集団推論)を行う場合、サンプルサイズ12は小さすぎ、統計的に有意とまではいえません。しかし、行政や福祉分野の調査では、回答率30%前後でも「現場の傾向をつかむ」目的であれば十分に有用とされることも多いです。したがって、アンケートの結果は回答施設の傾向を示すものであり、全体を代表するものではありません。
◎調査票の集計と分析
1.貴施設への入所にあたり、身元保証人(保証人、連帯保証人、身元引受人、その他類似の名称を含みます)を求めていますか。(1つのみ☑)(n=12)
| □ 入所要件として求めている | 10(83.3%) |
| □ 入所要件として求めていない | 2(16.7%) |
「入所要件として求めていない」理由:以下のような他の方法で対応しているため(複数回答可)(n=2)
| □ 成年後見制度の利用 | 2 |
| □ 身元保証会社等の利用 | 0 |
| □ 家賃債務保証会社の利用 | 0 |
| □ 損害保険会社の利用 | 0 |
| □ その他の利用 | 1 |
〔その他の記述〕
・身元保証という表現を用いていない。
◎分析
・8割以上の施設が「入所要件として求めている」と回答。依然として身元保証人が入所の前提条件となっている現状が明らかとなった。
身元保証人が必要だと考えられる理由を教えてください(複数回答可)(n=10)
| □ 支払の保証・担保 | 9 |
| □ 死後事務(遺体引き取りなど) | 10 |
| □ 医療同意 | 9 |
| □ 急変時の入退院手続き | 10 |
| □ 日常的な金銭管理 | 6 |
| □ 身体拘束への同意 | 5 |
| □ ケアプランへの同意 | 10 |
| □ その他:自由記述 | 1 |
〔その他の記述〕
・日頃の支援及び医療連携時の同意。
◎分析
・「死後事務」「急変時対応」「ケアプラン同意」が全施設で理由に挙げられており、医療・生活・契約上の包括的な同意代行者としての役割が求められている。
・支払い保証よりも、むしろ実務的・倫理的な場面での代理・支援者としての意味合いが強い。
・以上を鑑みるに身元引受人の概念は、「保証人」というより、「家族代行者」としての性格が強い。
2.身元保証人をつけることができない人について、どのような対応をしていますか? (1つのみ☑)(n=12)
| □ 入所を断っている | 2(16.7%) |
| □ 成年後見人の選任を促している | 10(83.3%) |
| □ 身元保証会社等を紹介している | 0 |
| □ 家賃債務保証会社を紹介している | 0 |
| □ 損害保険会社を紹介している | 0 |
| □ その他:自由記述 | 3 |
〔その他の記述〕
・福祉事務所担当と相談
・どの方も保証人がいた。
・入所を断ったことはないが、断ることになります。
◎分析
・大多数の施設(83%)が「成年後見人の選任を促す」と回答。後見制度への依存度が高い。
・一方で、「断る」と明言する施設も2件あり、身寄りのない人の入所困難が現実に存在している。ちなみに身元引受人がいないことは、入所を断る正当な理由にはならないと厚労省は述べている。
・「福祉事務所と相談」などの自由記述から、生活保護受給者に関して行政との連携による調整努力も一部で行われていると思われる。しかし、行政との相互協力は、標準化されていない。
3.介護施設入所時の身元保証人の問題をどのようにお考えになりますか?(複数回答可)(n=12)
| □ 国(厚生労働省)が対応してほしい | 8(66.7%) |
| □ 自治体が対応してほしい | 9(75%) |
| □ 家族が対応してほしい | 5(41.7%) |
| □ 民間機関が対応してほしい | 1(8.3%) |
| □ 可能な限り自分の施設で対応させてほしい | 0(0%) |
| □ その他:自由記述 | 1 |
〔その他の記述〕
・身元保証人として契約しているわけではない。
◎分析
・「自治体」「国」への要請が突出して多く、制度的対応(制度整備)を求める声が明確である。
・「民間」や「施設自身」に解決を求める姿勢は少なく、現場の限界意識が読み取れる。
・「家族が対応してほしい」という回答も4割あり、家族機能への期待と現実的困難さが見て取れる。
☆身元保証人の問題に関するご意見等をご自由にお聞かせください。(n=12)
・家族や親族がいる場合、身元保証としての契約をするわけではなく、入所時、退所後に担っていただくべき家族の役割を契約書にお示しし、取り交わしているので、何か損害賠償が生じるときや、亡くなった後の処理方法、医療同意を必ずいただくという点は理解の上、入所いただいている。
・成年後見人等、外部依頼により費用が発生するため、提案しづらい。国や自治体での対応策があると良いと思います。生活保護のように。
・制度化されていない民間での身元保証ビジネスは、いくつかの団体で自由に(グレーで)行われています。社会福祉法人でも対応可能な制度を国・行政が整備することを期待しています。
・後見人であっても、身元保証人にサインをしないと入居を不可とするフォームもあります。やはり、身元保証人というワードに際限がないからだと思います。しかし、一方で我々としても後見以上のことを求めています。例えば、入居時の衣類の名前記入など、家族ならやってくれることを身元保証人や後見人はやってくれない。となると、そこをホームがやらざるを得ない。線引きにより、仕事の押し付け合いも嫌ですね。
・身寄りがない人が増えていく中で、家族、身元保証人が現在行っていることを、誰が担っていくのか、どう対応していくのか、国や自治体が指針を示してほしい。正直、施設ですべてを担うのは人員的にもかなりの負担。経験の少ない職員だと、精神的にもかなりの負担。
・国や自治体で対応してほしいです。
〈まとめ〉
| 分析 | |
| 入所要件 | 約8割が身元保証人を必須とし、入所制限の要因となっている。 |
| 主な役割 | 死後事務・医療同意・入退院対応など、身元引受人が家族代行としてみなされている。 |
| 保証人がいない場合 | 多くが後見制度を促すが、時間がかかるため、実務上限界がある。 |
| 現場の課題意識 | 責任の曖昧さ・職員負担・制度不足など現場が行き詰まりを感じる状況にある。 |
| 求める対応主体 | 国・自治体への制度的整備を望む声が圧倒的である。 |
以上



